今日はジュリエット・ビノシュとの対談を読みながら移動。キアロスタミ女優でもあるところのビノシュによるキアロスタミ・エピソードが披露される。曰く、もともと面識のあったビノシュは、キアロスタミからテヘランに遊びにおいでと再三言われており、ついに腰を上げてビザを取得し空港に降り立ったら何故か報道陣に取り囲まれ、キアロスタミと2人で取材を受けて説明する羽目になった。何故プライベートなお友達訪問が公然の騒ぎになったか。同じ飛行機にジャーナリストが同乗していてそこから地上にビノシュが来るぞ!と連絡があったのでは説があったらしいのだけど、当初は存在しなかった映画の企画を、既成事実的に進めるためにキアロスタミがとぼけたふりして全て仕組んだのではないか…という説も。恐ろしい男や…。何もかも映画みたい。
そして私の大好きな「トスカーナの贋作」の誕生秘話。監督がビノシュに自分自身のエピソードとして、「イタリアで知り合った女性が自分(キアロスタミ)のことを夫だと思って演技を始めた」ことを話し始め、ブラジャーをどう外したかまで詳細に長々と話した後、「僕の言ったこと、信じる?」と聞かれたビノシュが「信じるわ」と返事すると、「実は全部嘘なんだ」とキアロスタミが言い、そしてあの映画が生まれた…とのこと。狐につままれたようなあの映画は、生まれた時から虚実入り混じっていたのだな、その意味では筋が通ってる。そして監督たち、俳優たちが語るエピソードを読むにつれ、キアロスタミの映画をもう、子供たちの自然な演技が素晴らしい!などと無邪気に観ることはないのだな、と遠い目で思う。