仕事が落ち着いたらね、の枕詞のつく約束ばかり積もっていく。岩井俊二の新作、どうかな?3時間もあるんだって。ユーロスペースでかかるのが意外、最後に観た岩井俊二、何だっけ…「花とアリス」?などやりとりし、たぶん観に行くだろう、仕事が落ち着いたらね。
暖かかった土曜の昼間、家からオフィスへの道のりは地上を歩く時間合計3分なので、コートも羽織らず、素足にバレエシューズですたすたと向かったら、冬じゅうタイツやソックスの庇護のもと眠っていた足の甲が、準備不足の照れくささと、冬眠から目覚めた悦びの中間の気配を漂わせており、「四月物語」を思い出した。
大学入学のため上京し、ひとりで新しい街に暮らし始めた主人公は、春の夜、ワンピースで自転車に乗って映画館に向かう。スカートと靴の間の露出した脚が、はじめての一人暮らしの開放感と、ぴりっと肌を刺す花冷えの夜の入り混じった気配を漂わせて。ささやかな四月を詰め合わせた「四月物語」、岩井俊二の映画で一番好き。
あの映画、確か、映画館で観たことなかったはず。と考えていたら、新作公開記念に早稲田松竹でかかる3本立てにラインナップされていた。35㎜。春の夜、ラスト1本で観たい。