ブレッソン映画はレンタルで出回ってるものが少ないように思うけど、近くの図書館に唯一あったタイトルが何故か「ジャンヌ・ダルク裁判」、未見だったので借りてみる。
冒頭の説明で、ジャンヌ・ダルクについて残された史料は少ないが、裁判記録は残されており、それに忠実に作られた映画とのこと。前後に何度も映画化された、物語に仕立てられた波乱の生涯を描くのではなく、裁判の場と地下牢を往復し、やがて火刑に処されるまでを淡々と描く、ブレッソンらしいストイックさ。歴史に疎い私は、63分という短さに助けられた。
裁判の内容は宗教問答に終始し、声が聞こえる、声に導かれたと主張するジャンヌは問い詰められる。頑なな表情から発される言葉の響きは、盲信が過ぎた女の狂言と、選ばれし者の証言の間を往復する。
女学生のように初々しい風貌の女優の着る飾りのない、布の分量の少ない上着、パンツ、ブーツが火刑の前に脱ぎ捨てられ、さらに簡素な円筒衣に着替えさせられ、はりつけにされたジャンヌが何故か最後に必要以上に女らしく見えたのは着るもののせいだろうか。
顔より先に手や足、足音が映し出されるブレッソンらしい映像。息の詰まる場面の隙間に、唐突に映し出される犬や鳥の動きが妙に目に残った。