シネマヴェーラ、清水宏特集へ。プログラムを観て、これぞと狙いを定めた「家庭日記(1938年)」を観た。桑野通子目当て。登場するたびに、みちこ!と心で呼びかける高揚感あり。みちこ以外に何も知らず観始めると、物語の中心は佐分利信だった。
佐分利信、若い…!1909年生まれらしいので、この時29歳か。小津映画での夫役、父親役の印象が強いせいか丸の内に勤め、なかなか出世もしている重役という印象ばかりのせいか、佐分利信にも20代が存在したのだなぁ…と感慨に耽った。もちろん誰にでも若き日はある。10代の佐分利信だって、生後3日目の佐分利信だってかつて存在したのだね…。
シネマヴェーラの次の次の特集はジョージ・キューカーだそうで、プログラムをいただいて帰る。意外なことにルビッチ「君とひととき」が上映されるようで、なぜルビッチ…?と思えば、この映画はルビッチ・サイレント時代の「結婚哲学」のリメイクで、ジョージ・キューカーが監督として撮ったもののラッシュを観たルビッチが気に入らず、途中から俺が撮るぜ、と現場を仕切り直したという、ジョージ・キューカー的にきっとほろ苦かっただろう映画。去年のルビッチ特集では「結婚哲学」との2本立ての日に年代順に観て、サイレント、トーキーどちらも良さがあると思ったけど、ルビッチに慣らされた身には違和感を覚えるセリフがあって、あの場面はきっとジョージ・キューカー監督パートだったに違いないと考えている。「女は間違う生き物だが、そこが可愛い。僕が守ってあげる」みたいなセリフだった記憶。ルビッチ絶対そんなの考えてもいないでしょ、そんな湿っぽいセリフがないからルビッチ好きなのに!
そんな「君とひととき」はモーリス・シュヴァリエ主演で、老いた印象が強かったせいか、モーリス・シュヴァリエにも溌剌とした若き日があったのだね…!と驚いた。西のモーリス、東の信。誰にでも若き日はある。